■永保寺(えいほうじ)の紅葉
放浪の宗教家、または文人といったら怒られるでしょうか。永保寺をつくった夢窓疎石は伊勢で生まれ、甲斐、鎌倉、京都と拠点を次々と変えました。若くして天台、真言の秀才でしたが、敢然と禅宗(臨済宗)の世界に飛び込みました。
永保寺は1313年、疎石38歳のときに、彼自らがつくった理想郷です。彼が理想としたのは中国の廬山。同山は日中双方の水墨画に描かれるほどの険しくも美しい山で、禅修行には最高の場所とされていました。
天龍寺や西芳寺(苔寺)の名庭を通じて作庭家のイメージが強い疎石ですが、永保寺では堂宇の建築を含めすべてを手がけたようです。自分の理想とする禅的な世界を、京都からも鎌倉からも離れた美濃の山の中に庵を結び、4年の歳月をかけて作り上げました。
垂直に切り立った岩には一筋の滝が流れ落ちて、深山幽谷の趣です。岩の前には、質素だが厳しさと品格を漂わせる観音堂(国宝)が据えられています。
疎石は厳しい自然と人間の営みを、温かい情感で表現する作庭家でした。池を渡る橋は、ゆるやかな太鼓橋で、橋の中央には禅宗風の屋根をいただいた四脚門が、ちょっと場違いなユーモアをたたえています。もっとも、後世の補作かも知れませんが…。
モミジは全山を染めるのではなく、主要なポイントに1本ずつていねいに植えられていまず。まるで1本1本が孤独を怖れず、自由な生き方を求めて踏ん張っているかのようです。
もちろん植えたのは疎石ではなく、後世の寺院関係者です。
でも、その植え方は疎石の心の持ち方にぴったり寄り添っている―そう思えてなりません。
■アクセス
◆〒507-0014
岐阜県多治見市虎渓山町5丁目11(永保寺駐車場付近/案内所)
岐阜県多治見市虎渓山町1丁目40
◆駐車場あり
◆入場無料
◆トイレあり
◆入山可能時間 7:00~17:00
(御朱印受付 9:00~16:00)
◆詳細ページ
https://kokeizan.or.jp/
◆お問合せ先
臨済宗 南禅寺派 虎渓山 永保寺
※紅葉に関して電話でのお問合せはお控え下さい。
(前記の公式ホームページを御一読下さい)
[TEL 0572-22-0351]
◆2024年の情報であり、変更される場合があります。